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2026-05-30

ハンタウイルス感染症が世界的に注目されていますが、実際に臨床経験がある先生からその臨床的な特徴など、経験談も含めて教えてほしいです。

【回答】

留学先・ニューメキシコ州での経験

私は20年前、ハンタウイルス感染症の流行地である米国ニューメキシコ州に留学していました。ニューメキシコ州は、日本の本州と北海道を合わせたくらいの広さがありますが、人口は札幌市と同じくらいの約200万人という、かなり人口密度の低い地域です。

州のキャッチフレーズは The Land of Enchantment(魅惑の地)。独特の魅力があり、都会から移住してくる人たちも多い場所で、私のお師匠さんもその一人でした。日本でいうと宮崎県に近いイメージを持っています。

僻地が多く、医師が一人もおらずナースプラクティショナーが一人で地域医療を支えている地域もありました。高次医療を提供できる施設は基本的に大学病院に限られるため、普段から大学病院にはヘリで多くの患者さんが搬送されてきます。

「ハンタコール」という現場の風景

ハンタウイルス感染症が疑われる患者さんも例外ではありません。ただ、初期には特徴的な症状が乏しいため、現地の医療者は大学の感染症科医に電話をかけ、搬送すべきかどうかを相談することになります。この通称「ハンタコール」が、日に何件もかかってくることがあり、そのたびに感染症科のラウンドは中断されていました。

感染症科の指導医にとっても、限られた情報からヘリ搬送の是非を判断するのはかなりタフな仕事に見えましたが、皆さん経験値が非常に高く、見事に対応されていました。

最初に経験した症例が教えてくれたこと

留学中に数例のハンタウイルス感染症を経験しましたが、一番印象に残っているのは最初に見た10代後半の男の子のケースです。
胸部レントゲンでは、淡いすりガラス陰影がほんの少し見られる程度。酸素飽和度もそれほど下がっておらず、正直なところ「この程度でヘリ搬送するんだ」と思っていました。

ところが数日後には、両肺が真っ白になり、ECMOに乗っていました。これは本当に衝撃的でした。

特に僻地の医師やナースプラクティショナーがハンタウイルス感染症を非常に心配するのは、こういった経緯からもよく理解できます。実際には「これは風邪だろう」というようなケースでも電話がかかってきます。

末梢血液像を用いた迅速な推定診断基準

当時、確定診断のための血清検査には時間がかかりました。そのため、結果が出るまでの間に血液検査や末梢血液像を参考にしていた記憶があります。使われていたのは以下の基準です(Koster ら, 2001)。

末梢血液像による推定診断基準(感度96%、特異度99%)
・血小板減少
・骨髄球増加
・血液濃縮
・好中球の有意な中毒性顆粒がないこと
・免疫芽球様の形態を示すリンパ球が10%以上あること

その後、2014年にDvorscakらが10年間の症例を検討した報告では、これらのうち4項目以上を満たす場合、感度89%・特異度93%でした。単項目で見ると、血液濃縮(ヘマトクリット値:男性50%以上、女性48%以上)が比較的特徴的とされています。

この基準は2023年の Lancet Infectious Diseases 総説でも紹介されています。現在ではリアルタイムPCRによって発症前から診断できるようになっており、PCRが利用可能な施設ではこのような基準が使われる場面は少ないかもしれませんが、検査へのアクセスが悪い地域では参考になると思います。

なお、この2023年Lancet ID総説のラストオーサーは、私が留学していたときの主任教授でした。とても怖かったです。

参考資料

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