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2026-07-07

アンチバイオグラムは、誰がどうやって作るのでしょうか?

【回答】

誰が、アンチバイオグラムを作るのが良いでしょうか

医療施設によって異なりますが、医師・検査技師・薬剤師・情報システム部門などがチームとして協力して取り組むと良いでしょう。 

アンチバイオグラム作成の一般的なルール(ガイドライン) 

日本国内では、米国臨床検査標準委員会(CLSI)のガイドライン(M39-A4等)に準拠した作成が推奨されています。具体的な作成ルールは以下の通りです。 

対象期間
原則として1年に1回作成します。ただし、分離株数が少ない場合は2年以上のデータを用いて作成してもよく、その場合は脚注に明記します。

重複処理
同一患者から同一菌種が複数回検出された場合、集計によるバイアスを避けるため、対象期間における「最初の1株(初回分離株)」のみをカウントします。

対象となる検体
感染症の診断目的で採取された検体のみとし、保菌検査(MRSAやVREのスクリーニングなど)や環境調査のデータは除外します。

株数制限(30株ルール)
統計学的な信頼性を保つため、1菌種あたり「30株以上」のデータが集まった場合のみ解析に含めます。30株未満の場合は参考値扱いとするか、作成の対象外とします。

感受性率の算出
抗菌薬に対して「感性(S:Susceptible)」と判定された株の割合(%)のみを表示し、「中間(I)」や「耐性(R)」の割合は含めません。

菌種ごとの特記事項
黄色ブドウ球菌(S. aureus)はメチシリン感性(MSSA)と耐性(MRSA)に分けて表記し、肺炎球菌(S. pneumoniae)は髄膜炎と非髄膜炎の基準に分けて表記します。

JANISは、どのようにしてつくられているのですか

目的と実務
日本の薬剤耐性菌や院内感染の概況を把握し、医療現場に役立つ情報を提供するため、厚生労働省が2000年から実施している事業で、実務は国立感染症研究所が担当しています。

データ収集
500床以上の大規模病院(約8割が参加)や中規模病院を中心に、全国の医療機関から毎月1回データが提出・集約されています。近年は小規模施設や診療所の参加も進んでいます。

公開情報
精度管理・集計されたデータは、日本全体の概況を示す「ナショナルデータ」として年報や都道府県別データで広く公開されています。

JANISを利用したアンチバイオグラムの作り方

JANISの検査部門に参加している医療機関では、国が提供する専用ツールを用いて、ガイドラインに準拠したアンチバイオグラムを自動・簡単に作成することができます。

1.  データの抽出
JANIS参加医療機関専用サイトから『重複処理確認ツール』を立ち上げ、対象期間や入院・外来などの条件を指定します。ツールが自動で重複処理(初回分離株の選別)を行った全データが表示されるので、それをCSVファイルとして出力・保存します。

2.  ツールの実行
ダウンロードしておいた『アンチバイオグラム作成ツール』に、先ほど出力したCSVファイルをドラッグ&ドロップします。

3.  アンチバイオグラムの生成
集計が自動で開始され、Webブラウザ上にアンチバイオグラムが表示されます。この結果は画像(PNG)やPDFとして保存することができます。設定ファイルを変更することで、CLSIの判定基準の年度を切り替えることも可能です。

ICT(感染対策チーム)やAST(抗菌薬適正使用支援チーム)が稼働している総合病院では、年に1回定期的に作成・運用されています。

自施設データでの作成
総合病院では検体数が多いため、「1菌種30株以上」の基準をクリアしやすく、自施設のデータのみで精度の高いアンチバイオグラムを定期的に(年1回など)作成できます。菌株によっては少ない場合には、掲載する場合には、株数を明記し、参考程度の情報となる旨を明記します。

クリニック(診療所)におけるアンチバイオグラムの作り方

クリニック(診療所)では、外来診療が中心であり培養検査の実施件数が少ないため、「年間30株以上」という基準を単独施設で満たすことは菌株によっては難しいことが多いです。

そのような場合には、単独での作成ではなく、以下のような外部リソースや連携を活用した作り方・運用が行われる方法もあります。

地域共同アンチバイオグラムの作成
J-SIPHE(感染対策連携共通プラットフォーム)などを活用し、地域の複数のクリニックや連携先の大病院のデータをオンラインで一元的にプールします。これにより株数を確保し、地域全体の外来患者の傾向を反映した「地域共同アンチバイオグラム」を作成・共有することで作成できます。

外注検査会社システムの活用
臨床検査会社に検査を外注している場合、検査会社が保有する地域データや自施設の累積データを電子カルテに取り込んで参照する方法もあります。

OASCIS(診療所版J-SIPHE)の利用
アンチバイオグラムの作成そのものが難しくても、レセプトデータ(UKEファイル)をOASCISに登録することで、クリニックにおける「抗菌薬処方率」や「疾患ごとの抗菌薬内訳」を可視化し、適正使用のモニタリングに代用しています。将来的にはJANISとAPI連携し、OASCIS上で地域のアンチバイオグラムを自動生成・閲覧できる機能の設計も進められています。

参考資料

1.JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)
https://janis.mhlw.go.jp/

2. アンチバイオグラム作成の一般的なルール(ガイドライン)
『アンチバイオグラム作成ガイドライン 2019年3月』(感染症教育コンソーシアム / AMR臨床リファレンスセンター)
https://amr.jihs.go.jp/pdf/201904_antibaiogram_guideline.pdf

2. JANISを利用した作り方
『アンチバイオグラム作成ツール 簡易マニュアル(厚生労働省 院内感染対策サーベイランス事業:JANIS)
https://janis.mhlw.go.jp/datause/material/アンチバイオグラム作成ツールマニュアル(2024年7月作成).pdf

3. 総合病院における作り方(活用例・電子カルテ統合など)
『効果的な感染症診療のための 細菌検査の迅速報告』
https://www.sysmex.co.jp/professionals/journal/assets/pdf/2011_Vol11_2_1.pdf

4. 個人のクリニック(無床診療所)における作り方・運用
『診療所版J-SIPHE 「OASCIS」の活用方法』(AMR臨床リファレンスセンター J-SIPHE専門家委員)
https://spmed.jp/kouenkai/pdf/kensyu_20230213_05.pdf

5.OASCIS 公式サイト
https://oascis.jihs.go.jp/

 

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