Q&A
2025-05-23
百日咳が流行しているニュースを見ました。どのような病気ですか。
【回答】
ご質問ありがとうございます。今、百日咳が流行しています。
1. 百日ってどんな病気?
・百日咳は「ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)」という細菌が原因の感染症です。
・主に咳が長く続くのが特徴で、特に小さい子どもや赤ちゃんがかかると重症になりやすいです。
・感染力がとても強く、1人の患者から16~21人にうつるといわれています。
・主に咳が長く続くのが特徴で、特に小さい子どもや赤ちゃんがかかると重症になりやすいです。
・感染力がとても強く、1人の患者から16~21人にうつるといわれています。
2. どんな症状が出るの?
・最初は普通の風邪のような症状(鼻水・くしゃみ・軽い咳)から始まります。
・2週間くらいすると、激しい咳が何度も続き、咳の後に「ヒュー」という音(笛声)が出たり、咳き込んだ後に吐いてしまうこともあります。
・発熱は多くありません。
・大人やワクチンを受けた子どもでは、症状が軽く、ただ咳が長引くだけのことも多いです。
・2週間くらいすると、激しい咳が何度も続き、咳の後に「ヒュー」という音(笛声)が出たり、咳き込んだ後に吐いてしまうこともあります。
・発熱は多くありません。
・大人やワクチンを受けた子どもでは、症状が軽く、ただ咳が長引くだけのことも多いです。
3. どうやってうつるの?
・百日咳は、咳やくしゃみのしぶき(飛沫)や、手についた菌が口や鼻に入ることでうつります。
・特に家族の中でうつることが多いです。
・特に家族の中でうつることが多いです。
4. どんな時に百日咳を疑うの?
・咳が1週間以上続き、徐々にひどくなる
・咳が連続して出て、顔が赤くなったり涙が出たりする
・咳の後に吐いてしまうほど深い咳
・家族や周りに百日咳の人がいる
このような時は、百日咳を疑いますので、受診の際に医師に伝えて下さい。
・咳が連続して出て、顔が赤くなったり涙が出たりする
・咳の後に吐いてしまうほど深い咳
・家族や周りに百日咳の人がいる
このような時は、百日咳を疑いますので、受診の際に医師に伝えて下さい。
5. どうやって診断するの?
検査方法 | 特徴・使い方 |
菌の培養 | 鼻や喉から綿棒でとった検体を培地に入れて菌を育てて調べる。 陽性と出れば最も確実に診断できますが、結果が出るまで時間がかかります。 百日咳の人から菌が検出できるのは、感染時に保菌している菌量が多い乳児でも60%以下と低いです。また、百日咳含有ワクチン接種歴のある人などは、菌の量が少ないため菌の検出はより困難です。 |
抗体検査 | 血液の中に百日咳の抗体が増えているか調べます。感染から2~3週間後に有効です 乳児と百日咳含有ワクチン接種後1年未満の人には、抗PT-IgG抗体による診断は推奨されていません。 |
LAMP法 | 菌の遺伝子を調べます。結果が早く正確です。外注検査でも2~3日で結果がでるため、診療所で利用しやすい検査です。 |
イムノクロマト法 | 抗原を調べる簡易キットです。15分で結果が出ますが、発症早期のみに有効です。 |
多項目同時検出PCR法 | 11~13種類の他の微生物も同時に遺伝子を調べられる検査方法です。費用が高いため、入院中で重症な方やリスクの高い乳児に限定して使うことを推奨しています。 |
6. 治療はどうするの?
・百日咳の治療は、主に「マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)」を使います。
・最近は、この薬が効かない「耐性菌」が増えてきているため、ST合剤を選択を考慮します。
・抗菌薬の効果は、発症から2~3週間以内に薬を飲むことで、周りへの感染を防ぐ効果があります(症状が軽くなることもあります)。
・発症して2~3週間以内(カタル期)は、周りへの感染力が強いです。そのため、学校保健安全法においては、第二種の感染症に規定されており、「特有の咳が消失するまで、または5日間の抗菌薬療法が終了するまで」は、学校を休む必要があります。
・最近は、この薬が効かない「耐性菌」が増えてきているため、ST合剤を選択を考慮します。
・抗菌薬の効果は、発症から2~3週間以内に薬を飲むことで、周りへの感染を防ぐ効果があります(症状が軽くなることもあります)。
・発症して2~3週間以内(カタル期)は、周りへの感染力が強いです。そのため、学校保健安全法においては、第二種の感染症に規定されており、「特有の咳が消失するまで、または5日間の抗菌薬療法が終了するまで」は、学校を休む必要があります。
7. 予防するには?
日本では、乳幼児期に「3種混合(DPT)」「4種混合」「5種混合」ワクチンとして定期接種があります。
・5~12年で免疫が弱くなるため、追加の接種も大切です。
小学校入学前(年長児相当)に「3種混合(DPT)」の任意接種を追加したり、11~12歳の「2種混合」定期接種の際に「3種混合(DPT)」に変更して接種(この場合は任意接種)することが推奨されています。
「こどもとおとなのワクチンサイト」百日咳:
https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=2&nid=172
・乳幼児が百日咳になると重症になることがあるため、乳幼児の家族が「3種混合(DPT)」ワクチンを接種することで、赤ちゃんを守ることが推奨されています。これは赤ちゃんを蚕(かいこ)のまゆで包んで守るという意味で「コクーン戦略」と言われています。3種混合ワクチン(トリビック????)は添付文書上、妊婦への接種も可能です。
・諸外国ではTdap(成人用三種混合ワクチン)を妊婦(妊娠27週-36週)に接種することで、乳児の百日咳感染を予防する効果が証明されています。Tdap がない日本では、その代替案として「3種混合(DPT)」の活用が考慮されます。ただし現時点では、妊婦への「3種混合(DPT)」による乳児百日咳の重症化予防効果はまだ証明されてませんが、最近の厚生労働省研究班からの報告では、妊婦への「3種混合(DPT)」接種の安全性と乳児への百日咳に対する抗体移行が確認されています 1)2)。
・5~12年で免疫が弱くなるため、追加の接種も大切です。
小学校入学前(年長児相当)に「3種混合(DPT)」の任意接種を追加したり、11~12歳の「2種混合」定期接種の際に「3種混合(DPT)」に変更して接種(この場合は任意接種)することが推奨されています。
「こどもとおとなのワクチンサイト」百日咳:
https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=2&nid=172
・乳幼児が百日咳になると重症になることがあるため、乳幼児の家族が「3種混合(DPT)」ワクチンを接種することで、赤ちゃんを守ることが推奨されています。これは赤ちゃんを蚕(かいこ)のまゆで包んで守るという意味で「コクーン戦略」と言われています。3種混合ワクチン(トリビック????)は添付文書上、妊婦への接種も可能です。
・諸外国ではTdap(成人用三種混合ワクチン)を妊婦(妊娠27週-36週)に接種することで、乳児の百日咳感染を予防する効果が証明されています。Tdap がない日本では、その代替案として「3種混合(DPT)」の活用が考慮されます。ただし現時点では、妊婦への「3種混合(DPT)」による乳児百日咳の重症化予防効果はまだ証明されてませんが、最近の厚生労働省研究班からの報告では、妊婦への「3種混合(DPT)」接種の安全性と乳児への百日咳に対する抗体移行が確認されています 1)2)。
8. 学校や仕事はいつまで休むの?
・学校保健安全法で「特有の咳が消えるまで、または5日間の適切な抗菌薬治療が終わるまで」は出席停止です。適切なタイミングで適切な抗菌薬を処方されていなかった場合には、発症後2週間は特に感染リスクがあります。
・学校以外では明確な決まりはありませんが、同じように「強い咳がおさまるまで」「5日間の適正な抗菌薬治療が終わるまで」は、出勤や不要不急な外出は控えましょう。詳しくは医師に相談してください。
・学校以外では明確な決まりはありませんが、同じように「強い咳がおさまるまで」「5日間の適正な抗菌薬治療が終わるまで」は、出勤や不要不急な外出は控えましょう。詳しくは医師に相談してください。
9. 診断したらどうする?(医療関係者向け)
・百日咳と診断した場合、7日以内に最寄りの保健所へ届出が必要です。
・届出用紙は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-23.html
「百日咳届出票」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/pdf/01-05-23-b.pdf
・届出用紙は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-23.html
「百日咳届出票」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/pdf/01-05-23-b.pdf
【ポイントのまとめ】
・百日咳は強い感染力を持つ咳の病気。ワクチンで予防できますが、時間とともに免疫は弱くなります。
・咳が長引くときは百日咳も疑い、早めの受診・検査が大切です。
・早期の薬の内服で周りへの感染を予防できます。
・乳幼児は特に重症になりやすいです。赤ちゃんのいる家族はワクチンで免疫をつけて、赤ちゃんを守りましょう。
・咳が長引くときは百日咳も疑い、早めの受診・検査が大切です。
・早期の薬の内服で周りへの感染を予防できます。
・乳幼児は特に重症になりやすいです。赤ちゃんのいる家族はワクチンで免疫をつけて、赤ちゃんを守りましょう。
【参考文献】
1)厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業) 分担研究報告書 妊婦に対する百日咳含有ワクチン接種の抗体応答と 反応原性及び児への移行抗体に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202219020A-buntan69.pdf
2)厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業) 分担研究報告書 妊婦に対する百日咳含有ワクチン接種の安全性に関する疫学調査:静岡Study
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202219020A-buntan70.pdf
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202219020A-buntan69.pdf
2)厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業) 分担研究報告書 妊婦に対する百日咳含有ワクチン接種の安全性に関する疫学調査:静岡Study
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202219020A-buntan70.pdf
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