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2025-05-28

百日咳に関しての抗菌薬の処方のタイミングと種類の選択、その目的を教えてください。

【回答】

抗菌薬の効果とその目的

・発症から2~3週間以内のカタル期の間に診断し適切な抗菌薬を処方すれば、症状を軽減し周囲への感染力を下げる可能性があります。

・具体的には、適切な抗菌薬の投与で6日目以降に百日咳菌の感染力は下がるとされています。抗菌薬投与開始後5日間は登園・登校・出勤・外出は禁止となり、百日咳への抗菌薬投与の主たる目的は、周囲への伝播を抑えるためとなります。

・もし、適切な抗菌薬が投与されなかった場合は,発症後3週間(カタル期)は登園・登校・出勤・外出は控えた方がよいと考えます。

また、発症から3~4週間以降となると抗菌薬の投与なしでも自然に感染力は下がることになり、この時期に抗菌薬を投与しても効果が期待できません。
  • https://www.jpca-infection.com/pics/news/news-95-2.jpg
【表の注釈】
*1:保険適応外ですが「百日咳」に対して処方・使用した場合、社会保険診療報酬支払基金では当該使用事例を審査上認めることになっています。 

https://www.ssk.or.jp/smph/shinryohoshu/sinsa_jirei/teikyojirei/yakuzai/no600/jirei_374.html

*2:新生児における肥厚性幽門狭窄のリスク/有害事象/安全性は、エリスロマイシン>クラリスロマイシン>>アジスロマイシン。
・Tiwari T, et al; National Immunization Program, CDC. Recommended antimicrobial agents for the treatment and postexposure prophylaxis of pertussis: 2005 CDC Guidelines. MMWR Recomm Rep. 2005 Dec 9;54(RR-14):1-16. PMID: 16340941.
・Almaramhy H, et al. The association of prenatal and postnatal macrolide exposure with subsequent development of infantile hypertrophic pyloric stenosis: a systematic review and meta-analysis. Ital J Pediatr. 2019 Feb 4;45(1):20. 
*3:新生児黄疸の有無/ビリルビンの数値をみて救命のため個別に使用を検討します。
*4:思春期・成人:百日咳での保険適応がありませんが、傷病名「気管支炎/肺炎」で処方可能です。
*5:小児:百日咳での保険適応がありませんが、傷病名「肺炎」で処方可能です。
*6:米国での初日1回500mg、2~4日目1回250mg 4日間の推奨投与とは異なりますが、PK-PD理論上は同等の効果が期待できると考えられます。
*7:マクロライド系抗菌薬耐性百日咳が想定される場合には、ST合剤を第一選択とした処方を検討します。
Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases, 33rd ed
*8:重症症例の場合には、アジスロマイシンとST合剤の併用投与も検討します。
・Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, et al. Red Book 2024-2027, 33rd ed, Report of theCommittee on Infectious Diseases: 656, 2024.
・Yu-Mei Mi,Ji-Kui Deng,et.al. Expert consensus for pertussis in children: new concepts indiagnosis and treatment World J Pedriatr.20(12):1209-1222,2024.
・「百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について」 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会  2025 年 3 月 29 日

https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250402_hyakunitizeki1.pdf

抗菌薬投与の目的と効果のまとめ

・カタル期/発症後2~3週間以内の投与を推奨します。

1. 症状改善への影響

・抗菌薬投与は臨床経過を変えず、主な目的は感染性期間の短縮となります。

・痙咳期(発症2~3週間以降)の抗菌薬投与は咳嗽の持続期間を短縮せず重症度を軽減しないとされます。

2. 感染伝播防止効果

・適切な抗菌薬を投与すると、投与開始後5日間で感染力が消失されます。

・曝露後予防投与(PEP:post-exposure prophylaxis)により2次感染率を50~80%低下とされますので、特に乳児や妊娠後期の女性との接触がある場合には、その対象者が2~3週間以内の迅速な抗菌薬予防投与が重要となります。

参考文献

1)Kline JM,et al. Pertussis: a reemerging infection. Am Fam Physician. 2013 Oct 15;88(8):507-14. Erratum in: Am Fam Physician. 2014 Mar 1;89(5):317. 

2)CDCガイドライン
https://www.cdc.gov/pertussis/php/postexposure-prophylaxis/index.html

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